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【過失逆転事案】横断禁止規制,幹線道路,夜間という条件で横断歩行者の過失を25%に抑えた事案

さいたま地方裁判所管轄内

■死亡事案(判例033)
■確定年:2020年 判決
■さいたま地方裁判所管轄内

被害者の状況

①25歳・男性(非正規労働者)
男性 非正規労働者(事故時25歳)
被害者が片側2車線の幹線道路を横断歩行中に自動車に衝突された事故
死亡

認められた主な損害費目

逸失利益

約4,800万円

葬儀関連費用

約200万円

死亡慰謝料(近親者分込み)

2,400万円

その他

約70万円

損害額

約7,470万円

過失相殺25%控除

-約1,860万円

既払金控除

-約40万円

弁護士費用

約550万円

遅延損害金

約930万円

最終金額

約7,050万円

詳細

加害者の主張

被害者は,横断禁止規制のある片側二車線の幹線道路を夜間に横断していた。加害者からすれば,高速運転が予定された横断禁止規制のある幹線道路を歩行者が横断してくることを予見することは困難であり,夜間で歩行者の発見が難しかったことも考慮すれば,歩行者側にも45%の重い過失が認められる。

裁判所の判断

①夜間とは言え事故現場付近はガソリンスタンドなどの照明で明るかった。そうであるにも関わらず,歩行者の発見が遅れた加害者の責任は重く,横断禁止規制があったことなどを考慮しても,被害者の過失は25%にとどまる。
②被害者は非正規雇用労働者であったが,25歳という年齢に鑑み,男子学歴計全年齢平均賃金551万円を基礎収入と認める。

【当事務所のコメント/ポイント】

①過失相殺

確かに,歩行者横断禁止規制のある片側二車線の幹線道路を,夜間に横断していた本件被害者に全く過失がなかったとは言えない事案であり,40%程度の大きな過失相殺がなされても決して不思議ではない事案であった。
しかしながら,本件事故現場の幹線道路沿いにはガソリンスタンドや大手宅配業者の集配所があり,夜間でも非常に明るかったから,一般的な常識の範囲内で普通に前を見て運転してさえいれば,歩行者を容易に発見できる環境にあった。そうであるにも関わらず,衝突直前まで被害者の存在に気が付かないほど漫然と運転していた加害者の責任は大きく,そのような加害者の著しい前方不注視を丁寧に立証した結果,25%の過失相殺に抑えることに成功した。
夜間,幹線道路,横断禁止規制という条件で歩行者の過失を25%に抑えることができた点に本判決の意義があり,的確に加害者の落ち度を立証すれば過失割合を動かすことができるということを示している。

②基礎収入

本件被害者は,芸能業界を目指して昼間は養成所に通い,夜間に飲食店などのアルバイトを掛け持ちしながら生計を立てていた。そのため,本件事故当時の収入自体は低かったものの,未だ25歳と若年で将来の可能性が無限であったことから,男子学歴計全年齢平均賃金551万円が基礎収入としてそのまま採用された。