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被害者大学進学を理由とする加害者側の7級主張を排斥し,自賠責同様被害者に高次脳機能障害5級を認定させた事例。

さいたま地裁管内

■高次脳機能障害(判例162)
■後遺障害等級:5級2号、併合3級 確定年:2017年 和解
■さいたま地裁管内

被害者の状況

①16歳・男性(高校生)
男性 受傷時16歳 高校生
原告が自転車で信号のない丁字路交差点を右折しようとして,交差道路を直進してきた被告自動車に衝突された。
併合3級(脳外傷による高次脳機能障害5級2号,外貌醜状7級12号)

認められた主な損害費目

治療費

約660万円

付添看護費

約70万円

逸失利益

約6,750万円

傷害慰謝料

約220万円

後遺障害慰謝料

約1,990万円

その他

約40万円

損害額

約9,730万円

*1過失30%控除
控除後

-約2,920万円
約6,810万円

既払い保険金控除後(任意)

-約1,020万円

自賠責保険金控除

-約2,219万円

*2調整金

約1,130万円

*3最終金額

約4,700万円

*1過失相殺分は人身傷害保険金から塡補され,実質無関係。
*2調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当。
*3自賠責保険金2,219万円,人身傷害保険金約2,920万円を加えた総受取額は約9,840万円である。

詳細

加害者の主張

①原告は事故後も大学に進学し,アルバイトも行っていて,運転免許も取得するなど,普通の大学生らしい生活を送ることができているのだから,原告の高次脳機能障害はせいぜい7級に過ぎない(7級すら怪しい。)。
②原告は自転車で突き当たり路側から右折してきたのであるから,原告に40%の過失相殺をすべきである。

裁判所の判断

①原告は表面上大学生活を送っているようには見えても,実際のところは,大学では授業の理解や単位取得が独力では困難なため母親にレポートを作成してもらう等の全面的なサポートを受けているのが実態である。またアルバイトでも接客の仕事はトラブルを起こしてしまうために皿洗い等しかできなかったり,運転免許を取得はしたものの注意力に障害があるため道路上では危険な運転を行ってしまったりするなど,高次脳機能障害に起因する諸症状が顕在化しているのだから,原告の高次脳機能障害は自賠責保険の認定通り5級に該当する。
②本件事故は通常の丁字路交差点における衝突事故であることに加えて,被告自動車が減速せずに交差点に進入したという大きい過失が認められるから,過失相殺率は30%とする。

当事務所のコメント/ポイント

交通事故による高次脳機能障害について,自賠責保険で認定された等級を加害者側(保険会社側)弁護士が争ってくる事態はしばしば見られるところである。この事例では,自賠責保険による5級の認定に対し,保険会社側から被害者の大学生活の様子を根拠として「最高でも7級程度」との主張がなされた。
そこで我々においては,被害者ご家族と綿密に連絡を取り合いながら,無関係の第三者から見れば被害者が一見普通の大学生活を送っているように見えても,実態としては高次脳機能障害の影響で多大な生活上の支障・苦労を強いられている事実を丁寧に分析の上主張立証に努めた。その結果,裁判所も自賠責保険の認定通り,原告の高次脳機能障害が5級相当であることを認めたのである。
加えて被害者家族がかけていた人身傷害保険金も適切に請求した結果,過失相殺分が適切に補填され,高次脳機能障害5級(後は外貌醜状7級)ながら総取得額としては自賠責保険金及び人身傷害保険金を併せて約9,840万円と高額になった。

- 引用 -

被害者大学進学を理由とする加害者側の7級主張を排斥し,自賠責同様被害者に高次脳機能障害5級を認定させた事例。