交通事故での弁護士相談|高次脳機能障害でお悩みの方へ

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過失相殺70%の高次脳機能障害3級被害者について,適切に人身傷害保険金を請求した結果,損害賠償額と人身傷害保険金額を合わせた総獲得額が約1億2290万円に達した事例。

さいたま地方裁判所管轄内

■高次脳機能障害(判例175)
■後遺障害等級:3級3号 確定年:2017年 和解
■さいたま地方裁判所管轄内

被害者の状況

①22歳・女性(兼業主婦)
女性 受傷時22歳 兼業主婦
原告自転車と被告自動車が交差点で出合い頭に衝突した事故(原告赤信号,被告青信号と思われる。)。
脳外傷による高次脳機能障害3級3号

認められた主な損害費目

治療費

約240万円

付添看護料

約400万円

休業損害

約590万円

逸失利益

約6,210万円

将来介護料

約4,180万円

傷害慰謝料

約250万円

後遺障害慰謝料

約1,990万円

その他

約20万円

損害額

約1億3,880万円

*1過失70%控除
控除後

-約9,710万円
約4,170万円

自賠責保険金控除

-2,219万円

*2調整金

約1,050万円

*3最終金額

約3,000万円

*1人身傷害保険金6,000万円が過失相殺分に塡補されるため,実質的な過失相殺額は-約3,710万円相当となる。
*2調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当。
*3自賠責保険金2,219万円,人身傷害保険金約6,000万円を加えた総受取額は約1億1,220万円である。

詳細

加害者の主張

① 原告は日常生活動作そのものは自立するまでに回復しているのだから,さほどの看視は必要ないはずであり,将来の付添介護は不要である。
② 原告自転車が赤信号,被告自動車が青信号での衝突事故であるから,80%の過失相殺をすべきである。

原告の反論

①  原告は高次脳機能障害のため注意障害,記憶障害,遂行機能障害,感情コントロール能力の低下などの症状が顕著になってしまい,日常生活・社会生活全般にわたり声掛け・見守り等の介護が将来にわたり必要不可欠である。よって,日額6,000円を基礎に将来介護費用が認められるべきである
② 目撃者証言を始めとする証拠によれば,被告の主張する信号の色には疑問があり,80%の過失相殺は高すぎる。

・最終的にこの点について原告の主張に沿った内容での和解が成立。将来介護料は日額6,000円で算定し,過失相殺は70%とされた。

当事務所のコメント/ポイント

① 自賠責等級にかかる対応について

  もともと本件は被害者家族が我々に初めて相談された際,受診先の病院が高次脳機能障害に関する十分な知見を有していなかった結果,被害者の高次脳機能障害が実態より軽く7級との後遺障害認定を受けていた事案である。被害者家族もこの結果を真に受け,被害者の高次脳機能障害を実態より軽いものと考えておられた。
この点について,我々は本人に面談したところ,実際には被害者本人の症状はより重いものと考えた。そこで,高次脳機能障害の知見を有する適切な病院の情報を紹介し,同病院での診断結果等も踏まえ,自賠責保険に対する異議申立を実施した。これら診断結果や医療記録,また高次脳機能障害の等級認定基準を引用しながら適切に主張を行った結果,被害者の実態に見合った3級という後遺障害等級認定を最終的に受けることができ,ご家族からも喜ばれた。

②  人身傷害保険金の請求について

  上記のとおり3級と認定された被害者につき,被害者の加入していた自動車保険に付保されていた人身傷害保険金をあらかじめ請求したところ,人身傷害保険会社より,被害者の等級3級(2級未満)においては日常生活動作が自立しており,介護が必要ないため,人身傷害保険の支払保険金上限(本件では3,000万円)を2倍にするとの約款上の規定(いわゆる「倍額条項」)は本件に適用されないとの見解を示してきた。
  しかし,本件を含め,3級高次脳被害者に対しては実態としては介護(声掛け・見守り)が必須であるケースがほとんどである。そこで,我々においてこうした実態と,実際に本件被害者が介護(声掛け・見守り)を必要としている現状を指摘し,人身傷害保険約款に照らせば倍額条項が適用されるはずであることを説明しながら交渉を行った。これによって,人身傷害保険会社側も,約款の文面に照らせば本件被害者には倍額条項が適用されることを認めた。
  その結果,被害者に支給される人身傷害保険金額は,当初の提示である3,000万円から6,000万円へと倍増し,その全てが過失相殺分に充当されることとなったため,実質的に獲得額が3,000万円増額となり,やはりご家族から喜ばれた。

③ 裁判について

  交通事故で高次脳機能障害3級を負った被害者について,保険会社側は往々にして「3級で日常生活動作そのものが自立しているから将来の介護は不要」との主張を行う。しかし,前記のとおりほとんどの3級高次脳被害者に対しては介護(声掛け・見守り)が必要である。
本件では我々において,被害者の高次脳機能障害による精神症状の重さを丁寧に説明し,被害者に対し必要な介護の内容とその負担の大きさについて丁寧に主張した結果,将来介護費用は高次脳3級としては高額な基準(日額6,000円)の計約4,180万円を勝ち取った。
また,過失相殺に関して,保険会社側は80%との主張を行っていたが,我々において刑事記録上の実況見分調書や事故の目撃者証言,現場の信号サイクルといった記録を精密に引用し,80%は高すぎると反論を加えた結果,過失相殺率については70%との判断を勝ち取ることができた。
加えて前述の人身傷害保険金(6,000万円)も適切に請求した結果,過失相殺分が優先的に補填され,総取得額は自賠責保険金及び人身傷害保険金を併せて(当方の過失が70%あるにも拘わらず)約1億1,220万円と,高次脳3級として高額な成果になった。