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高次脳機能障害40代主婦について介護料日額1万5000円として損害総額として1億8000万円以上が認定された和解

千葉地方裁判所管内

■高次脳機能障害(判例189)
■後遺障害等級:1級1号 確定年:2018年 和解
■千葉地方裁判所管内

被害者の状況

①40歳・女性(主婦)
固定時40歳 女性・主婦
被害自転車を後方から追い抜こうとした加害自動車が進路変更中の被害自転車に衝突したもの
高次脳機能障害 1級1号
半盲 9級3号、羞明(右眼散瞳)14級相当

認められた主な損害費目

治療関係費

約390万円

症状固定前付添費

約500万円

休業損害

約500万円

後遺障害逸失利益

約3110万円

将来介護料

約9840万円

介護住宅費

約390万円

介護機器・介護雑費

約310万円

将来介護雑費

約460万円

保佐関連費(保佐人報酬等)

約310万円

傷害慰謝料

約410万円

後遺障害慰謝料

約2800万円

その他

約450万円

損害総額

約1億8570万円

過失相殺(60%)

-約1億1250万円

損害填補(自賠責)(※2)

-約4000万円

調整金(※1)

約1780万円

近親者慰謝料

約170万円

最終金額

約5270万円

※1事故日からの遅延損害金や、弁護士費用、慰謝料増額事由の考慮等を含める
※2自賠責保険に対する請求も当事務所にて行い、自賠責保険金約4000万円を合わせると総額9000万円以上の賠償金を獲得した

詳細

被告主張

①被害者は、ADLは自立しており高次脳機能障害は2級相当であり、半盲に対しては介護は不要であるとして、自賠責認定1級を争った。また、家族が行う介護は、看視と部分的介助のみであり、日額9000円を超えない等と主張した。
また、母親は既に67歳を超えているところだが、79歳までは就労可能であるなどとして、母79歳までは、家族介護の限度でのみ賠償を認めるのが相当だと主張した。
②内縁の夫の健康保険上の被扶養者に被害者が入っていないことから、同居の事実が無かったと断定し、家事をしていないとして、逸失利益自体を争った。
③元々ふらつき走行していた被害自転車が当然、加害自動車の進路に進出(進路変更)してきた事案であり、被害者の過失は90パーセント以上であると主張。

裁判所の判断

①介護状況や障害実態について、医療記録だけではなく、被害者自身の障害内容についての動画なども提出し、身体的な面でも介護が必要であること、介護負担の大きさを考えれば、既に67歳を迎えている母を主たる介護者として想定するのではなく、基本的に職業介護人によるべきとして介護料を算定すべきであること等を詳細に主張立証した。
その結果、裁判所は和解案において、被告の上記主張を排斥した上で、全て職業介護人による介護が相当として日額1万5000円を認定した。
②事故前の生活実態などを詳細に主張・反論を行い、裁判所においても、家事従事者であると認めて、休業損害・逸失利益を認定した。
③事故態様・過失相殺に関しては、後続車両の運転をしていた被告は、先行している被害者が事故前からふらつき運転をしている様子などを確認して、クラクションなどを鳴らしていたところであり、既に運転が不安定な状況であることは十分に把握していたはずであること等の指摘を含めて、詳細な議論を繰り返した。
その結果、裁判所としては和解案では、被害者の過失は6割に留まると判断し、被告主張の9割もの過失相殺は認めなかった。

当事務所のコメント

①高次脳機能障害のみの被害者の場合、身体介護が必要な場面は比較的少なくなるため、一見すると大した世話が必要ではないのではないかという評価を受けることがあります。しかしながら、生活に必要最低限の動作(ADL)が自立していても、結局、日々の生活場面での判断や、自発的な活動、適切な意思疎通、記憶や情緒面などに問題を抱えていると、とてもではありませんが、自立して生活していくことは困難という場合も多くあります。
本件では、そもそも高次脳機能障害の他にも半盲などの身体的障害も残っており、身体面でも介助が適宜必要でした。
高次脳機能障害に対しても、常時見守り(看視)介護を必要としており、既に67歳を超えている家族に負担の重たい介護を任せることはできない状況でした。
当事務所では、これまでにも数多くの高次脳機能障害の方、障害のために介護が欠かせない方の賠償をお手伝いしており、高次脳機能障害という複雑な障害についても、介護の大変さや、負担の大きさについて、どのような立証方法が、実態を的確に裁判所に評価してもらえるのかという観点についても、深い知見と経験があります。
本件は、充実した立証活動により、被害者の障害の重篤さ、ご家族の介護の大変さが裁判所に適切に評価された好例と言えます。
②本件は、内縁関係という事案の性質から被告から主婦性それ自体について争われる部分がありました。
交通事故賠償の場面では、あらゆる角度・観点から相手方は賠償を減額できる要素がないか主張・反論を行ってきます。
本件では、事故前の生活実態に関して、十分に立証・反論をしたことで、被害者が家事従事者であることが適正に評価されました。
③過失相殺は、賠償額に大きく影響がある争点の1つです。
本件では、目撃者という人物がおり、その証言が必ずしも被害者にとって有利な内容ではないという側面があった事件です。
目撃者証言自体も不正確な部分があることは明らかで、当然、その違和感や問題点については詳細な分析を行って裁判所にも主張を行いました。ただ、どうしても利害関係のない第三者証言を裁判所は信用しやすい傾向にあります。
当職らは、目撃者証言の正確性のみに拘泥せず、加害者側が説明を行う内容に照らしても、相当な不注意や過失が加害者にあることを細かく立証していきました。
その結果、被害者の過失を90%であるとする被告主張を排斥することができました。
④また、本件は、調整金として認容された損害元本額の約50%にも相当する約1780万円が認められました。
調整金は、和解において遅延損害金(賠償完了までの利息のようなものです)や、弁護士費用相当損害金等を加味して裁判所が加算する賠償金です。
本件では相応の過失相殺が生じましたが、調整金を含めて約5270万円の賠償を得ることで、自賠責と併せて9000万円以上の賠償金を獲得することができました。