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若年者の遷延性意識障害1級事案

宇都宮地方裁判所管轄内

■遷延性意識障害(判例039)
■後遺障害等級:1級 確定年:2017年 和解
■宇都宮地方裁判所管轄内

被害者の状況

①16歳・男性(高校生)
男性 高校生 受傷時16歳 症状固定時18歳
被害者が自転車で歩道を走行中,歩道に乗り上げた加害車両に衝突された
遷延性意識障害1級

認められた主な損害費目

付添看護料

約290万円

傷害慰謝料

440万円

逸失利益

約9,520万円

後遺障害慰謝料

3,000万円

将来介護料

約1億0,300万円

住宅改修費用

1,000万円

介護機器類費用

約1,000万円

その他

約450万円

損害額

約2億6,000万円

自賠責保険金控除

-4,000万円

調整金

約4,700万円

近親者慰謝料

800万円

最終金額

約2億7,500万円

*1)調整金とは,弁護士費用,遅延損害金相当
*2)自賠責保険金4,000万円を加えて,総額約3億1,500万円を獲得した。

詳細

加害者の主張

被害者が最重篤の後遺障害を負ったことは否定しないが,そうであればこそ在宅介護は不適切というべきで,医療的にも介護環境的にもより充実した看護を受けられる医療機関で介護を行っていくべきである。よって,在宅介護を前提とした原告の主張は是認することができない。

裁判所の判断

家族の希望により現実に在宅での介護を行っているから,今後も在宅で介護を継続していくものとみるのが相当である。よって,将来介護料は,在宅介護を前提に,母67歳まで日額1万5,000円,母67歳以降は職業介護費用が増えることを考慮し日額2万円として認める。

当事務所のコメント/ポイント

① 本件のポイント

 被害者は遷延性意識障害1級の方であり,ご家族の希望により,施設ではなく,在宅での介護が選択された。母が中心的な介護の担い手となりながら,訪問看護,訪問入浴,訪問リハなど職業介護人も利用し,ご家族が近くで見守りながら安心した生活(介護環境)を確保した。これに対し,被告からは,「重度後遺障害被害者の在宅介護は現実的ではなく,医療機関での介護を前提とすべき」との主張がなされたが,当事務所では,被害者には在宅介護が適切であること,そのための介護体制が十分に整備されていることを主張立証し,在宅介護を前提に,日額1万5,000円~2万円の将来介護料を獲得することができた。

② 在宅介護のメリット

 遷延性意識障害の方にとって,在宅介護には大きく2つのメリットがある。
1つ目は,家族が頻繁に接触することによって継続的な覚醒刺激を与えることができ,これによって意識状態の改善は期待できる点である。これに対し,施設や病院では,多くの患者を抱えているため,食事や入浴などの時間を除けば放置されてしまうことも決して少なくなく,廃用が進んでしまうことがある。
2つ目は,感染症のリスクが病院や施設に比べて低いことが挙げられる。この点,病院の方が安全に思われがちであるが,病院には不特定多数の人が絶えず出入りするため,感染症のリスクが思いの外高く,免疫力が低い遷延性意識障害の患者にとっては,かえって在宅介護の方が安全なのである。また,医師・看護師の医療的ケアについても,訪問医のサポートを受けることができるため,医療環境の側面からみても,在宅介護が劣るということは決してない。

③ 在宅介護が裁判で認められるための要件

 現実に在宅介護を行い,裁判で在宅介護費用が認められるためには,以下の4つの要件を満たす必要がある。この在宅介護体制の構築と,裁判における主張立証は,当事務所が最も得意としている分野である。
 ⅰ 介護保険などの福祉サービスを利用した適切な介護体制の確立
 ⅱ 住宅改修などのバリアフリーな住環境の整備
 ⅲ 訪問医の確保等,医療環境の整備
 ⅳ 最後に,在宅介護を望むご家族の意思