事故当時6歳児童の高次脳機能障害について自賠責による非該当との認定を覆し、総額6000万円以上の賠償金を獲得した和解事例
東京地方裁判所管内
■高次脳機能障害(判例204)
■後遺障害等級:7級4号 確定年:2019年 和解
■東京地方裁判所管内
被害者の状況
①6歳・男児
事故時6歳・固定時9歳
加害車両は後退しながら私道に入ろうと進行していたところ、私道入口付近にいた被害者に気付かず、被害者に衝突したもの
高次脳機能障害
自賠責保険の認定 非該当
⇒自賠責保険・共済紛争処理機構の調停結果 7級4号
認められた主な損害費目
約260万円 |
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入院雑費 |
約20万円 |
入院付添費 |
約80万円 |
通院期間付添費(介護料) |
約400万円 |
後遺障害逸失利益 |
約3,400万円 |
将来介護費 |
約500万円 |
傷害慰謝料 |
約310万円 |
後遺障害慰謝料 |
約1,000万円 |
その他 |
約60万円 |
損害総額 |
約6,030万円 |
過失相殺率0(被害者は無過失) |
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損害填補(自賠責保険)(※2) |
約1,050万円 |
損害填補(任意保険等) |
約1,070万円 |
調整金(※1) |
約1,590万円 |
最終金額 |
約5,500万円 |
※1事故日からの遅延損害金や、弁護士費用を含める
※2後記詳細のとおり当事務所にて自賠責の非該当認定を争い自賠責認定において、7級の認定を勝ち取った。
和解金と自賠責保険金を合わせると総額6,500万円の賠償を獲得した。
詳細
被告主張
①被告は、医学意見書などを提出し、脳画像上、脳損傷を基礎付ける所見である脳室拡大がない、事故態様からも脳外傷による意識障害が生じたとは認められないといった主張のほか、既存症として発達性ディスレクシア(読み書き障害)がある、中学まで問題なく通えている等として、高次脳機能障害の発生自体を改めて争った。
②被告は後退時何度も左右のドアミラーなどでも後方を確認したが、被害児童など人影は確認できなかったので、被害児童がしゃがみこむなどして、被告から視認不能な状態にあった可能性がある等として、無過失を主張した。
裁判所の判断
①被告の高次脳機能障害を否定する主張に対して、脳外傷の画像所見について、極めて詳細な医学的知見を交えた反論を行い、被告側の医学意見書を弾劾するため、脳画像については複数の医師意見書を当方からも提出し、脳外傷が画像所見上も認められていること等を緻密に立証した。
また、既存障害があるのではないかとの一方的な被告の言い分に対しても、事故後に認められている被害者の症状内容が読み書き障害というだけでは全く説明が出来ないこと、従前の被害者の発達状況にも問題はないことなど、障害実態に即して医療記録、御家族からの報告などの根拠を示しながら丁寧な立証を行った。
その結果、裁判所も和解案提示において、高次脳機能障害の発生自体を否認する被告主張を完全に排斥する認定を行った。
②被告の無過失主張に対しては、刑事裁判自体も被告に有罪判決が出ている上、刑事段階の被告自身の説明内容を精査しても明らかに後方確認不足があったことは明らかであり、被害児童がしゃがんでいた可能性については何らも明確な証拠もないことを指摘したところ、裁判所和解案では、被告の無過失主張は完全に排斥され、被告に100%の賠償責任があることが認められた。
当事務所のコメント
①児童の高次脳機能障害については、一般的に障害がどこまで残存するかについては、相当長期間にわたって生育過程を見守っていく必要もあり、訴訟においても、加害者側からは、本人の元々の性質ではないかといった指摘や、事故とは無関係の発達障害などがあるのではないかといった主張が展開されることも少なくなく、高次脳機能障害の立証自体が極めて難易度が高く、主治医は当然のことながら、弁護士も高次脳機能障害に対する深い知見を有していなければ、適正な認定・賠償を得られなくなってしまいます。
本件でも、自賠責保険の後遺障害等級認定手続きでは、被害者の高次脳機能障害自体を否定してしまうという状況にありました。
本件においては、既に自賠責から非該当判断が出た後の事故発生から5年経過した段階からご相談を受け、自賠責認定が誤りであることを粘り強く立証し、訴訟前の段階では、紛争処理機構の調停を経て、自賠責との関係では、高次脳機能障害7級との認定を得ることが出来ました。
一旦行われた認定を覆す難易度は一般的に極めて高いところですが、当事務所では長年、交通事故による高次脳機能障害の後遺障害認定を相当な件数お手伝いをしてきた経験があり、自賠責認定の誤りを的確に、粘り強く指摘し、障害の存在を立証していったことで、本件でも、高次脳機能障害非該当の判断を覆すことができました。
②訴訟においても、被告側から医学意見書などが提出されて、脳外傷自体がないといった主張や、事故とは無関係の読み書き障害などがあるのではないかといった多様な反論が展開されました。
これに対しては、医療文献に基づいて、高度な再反論書面を作成し、被告主張の問題点を緻密に指摘していくことで裁判所において、相手方に医師の意見を完全に排斥することができました。
③事故態様についても、刑事記録を丁寧に精査した結果、被告側の不合理な民事裁判での主張を排除し、被害者の無過失を明らかにしました。