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延性意識障害60代後半男性の将来介護費について介護保険利用額10割の月額約30万円と別途家族介護料と自費の職業介護人費用として日額1万8000円を認定して、将来介護料9000万円以上、総額1億5000万円を超える賠償を認めた和解事例

横浜地方裁判所管内

■遷延性意識障害(判例046)
■後遺障害等級:1級1号 確定年:2018年 和解
■横浜地方裁判所管内

被害者の状況

①69歳・男性(給与所得者)
固定時69歳 男性・給与所得者
道路上を歩行していた被害者に後方から接近してきた加害車両が追突し、被害者を轢過した(被害者側が完全無過失の事例)
遷延性意識障害 別表第1・1級1号

認められた主な損害費目

付添看護料(症状固定後を含む)

約570万円

休業損害

約330万円

後遺障害逸失利益

約1,400万円

症状固定後入院費

約130万円

将来介護費(在宅移行後)

約9,100万円

介護住宅費

約1,000万円

将来介護雑費

約490万円

介護用品費用等

約290万円

傷害慰謝料

約350万円

後遺障害慰謝料

約2,800万円

成年後見人費用

約610万円

その他

約200万円

損害総額

約1億7,270万円

損害填補(自賠責保険)

-約4,000万円

調整金(※1)

約1,830万円

近親者慰謝料

約700万円

 最終金額

約1億5,800万円

 
※1事故日からの遅延損害金や、弁護士費用を含める
本件では、事故日から6年もの年月が経過していたことが相当程度加味された
※2上記自賠責保険金の獲得についても当事務所にて自賠責請求を行った。総獲得額としては、60代後半男性としては極めて高額な1億9000万円を超える賠償となった。

詳細

被告主張

将来介護費用について、被告は、将来的には介護機器が開発されていくため介護負担は軽減する、将来的には介護サービスがより廉価になる、将来介護料はフィクション性が強く、不確定要素も多いため控え目な算定を行うべきであり、日額1万5000円程度が妥当だと主張した。

裁判所の判断

本件では、裁判所和解案の提示後、さらに、裁判所、被害者(原告)と被告との間でも相当な協議を重ねて、双方から和解内容についての対案を出して、最終的な解決内容を決定した。
その前提として、裁判所から将来介護料について、非常に重要な判断が示されているので、下記にて概要を述べる。

まず、当方からは、下記コメントのとおり遷延性意識障害の被害者にどのような介護体制・サービスが必要であるかという点、将来介護料算定においては、現時点で行われる介護保険給付が維持されない可能性があり、その点を踏まえた場合、公的給付部分を含めた10割の介護サービス費を加害者側が賠償を以て負担するべきであるといった法律理論を踏まえた詳細主張を行った。
その結果、裁判所からは、

①介護保険を利用して行っている随時の介護サービス費については、現状の公的給付部分+利用者負担額を合わせた「10割」を前提に将来介護料を算定する

②さらに、上記①はあくまでも随時の訪問介護であるところ、家族と職業介護人が常時1名は付添介護をする必要があるので、上記①の随時行われる介護サービス費とは別途、日額2万円前後の常時介護費用を認め、これも将来介護料として算定する。

といった判断が示された。
上記の、裁判所見解を前提に、原告・被告間でも協議を行い、上記の和解内容にて最終解決を図った。

当事務所のコメント

将来介護料については、従前の裁判所の見解として、家族と介護保険適用サービス分を踏まえても、到底実費全額(介護保険負担を10割とした費用)を前提にすると安価な日額2万円前後の費用しか認めないという認定態度が長らく続いています。
しかしながら、介護保険制度自体が現行のものから変更されて、より利用者の負担が増大する可能性もある上、介護保険給付自体が賠償との調整により停止措置を取られてしまう場合もあるため、「控え目」に算定を行うということ自体、何らも合理的な根拠はないものだと当事務所では考えています。
それでも、控え目な算定を行う裁判所の認定は根強いところですが、今回の裁判所が和解案提示際して示した考え方は、まさに、理論的にも、そして、介護費用の実態に照らしても極めて正当な判断が行われているものと評価しています。
当事務所では、専門的に多くの遷延性意識障害等の重度障害の方の在宅介護に関わる賠償について解決を図っており、長年に渡り行われてきた介護料算定に関する議論について深い知見を有しております。常に先鋒に立ち、可能な限り、被害者、御家族が安心して介護を行っていけるように、最善を尽くしております。